最近、私を指導教員として希望する外国人学生がボツボツといらっしゃいます。そこで、学生さんと私の両方の便宜のために、この際、私に問い合わせる前にご検討いただきたい項目についてまとめておきました。
1)研究テーマが合致するか
私の研究室では、大括りに言えば、保健、医療、福祉サービスの供給制度の分析を通じて、健康や生活を支援することの意義を理解するということを基本的アプローチとしています。もちろんそれからはみ出した研究を禁止していませんが、私がアドバイスできる範囲からはなれてゆくことになります。たとえば、医療保険の研究を中心とする社会保障論、医療経済学は私の専門ではありません。あなたの研究テーマに私の専門やゼミの方向性が合致しますか。
2)日本の研究をする気があるか
私は、日本に留学して研究する場合、一般に日本をフィールドに研究することが最も効果的であると考えています。ご自身の出身国と日本の比較的視点を大切にしつつも、主要なフィールドについては日本に定めるという考えに賛同できますか。
3)知識習得ではなく研究をする気があるか
とくにアジア圏からの留学希望者の方に多いのですが、日本の進んだ社会保障制度を学んで母国に持ち帰りたいという希望のある人がいます。このような方は私を師事するのに向いていません。というのも、私は、知識を伝授する教育をゼミや個人指導において実施していないからです。私が行なっているのは、物事を研究者として考える方法について、折々にアドバイスすることです。このような指導に賛同できますか。
4)研究テーマを自分で開拓する気があるか
私は、基本的に大学院生に研究テーマを指示しません。良い研究テーマを見つけることこそが研究の本質であると考えるからです。このような私の考えに賛同できますか。
5)修士2年間は研究するには大変短いということを分かっているか
修士論文は、完成された研究成果ではありません(公刊されないことがその証拠)。ひとまとまりの研究をするには博士課程に進まなければならないし、修士号のみで大学を離れる場合には、この中途半端さを受け入れなければいけません。この点は理解していますか。
6)資格要件を満たしているか
一橋大学の大学院、研究生制度があなたの希望に合致しているかどうか確認して下さい。
院試:
http://www.soc.hit-u.ac.jp/admission/gs/f-admission.html
研究生:
http://www.hit-u.ac.jp/ryugaku/foreigners/scholars.html
7)私の研究の評価
大学院進学に際しては先生選びが非常に大切になります。私の研究室を志望するに先立って私の研究についてよく検討して下さい。何本かダウンロードできる文章を紹介しておきます。なお、私の研究についての考えについてはブログに掲載しているのでこちらも参照してください。
猪飼周平「海図なき医療政策の終焉」『現代思想』2010年3月号
http://ikai.soc.hit-u.ac.jp/general/ikai10.pdf
猪飼周平「病院の世紀の理論から地域包括ケアの社会理論へ」『書斎の窓』(有斐閣)2010年9月号草稿
http://ikai.soc.hit-u.ac.jp/10/shosai_no_mado.pdf
猪飼周平『病院の世紀の理論』有斐閣2010年
http://www.amazon.co.jp/dp/4641173591
猪飼周平「ヘルスケアの歴史転換と助産師」『助産雑誌』2010年10月号
http://ikai.soc.hit-u.ac.jp/10/ikai_josan2010.pdf
猪飼周平「地域包括ケアの社会理論への課題 -健康概念の転換期におけるヘルスケア政策」『社会政策』第2巻第3号2011
http://ikai.soc.hit-u.ac.jp/11/ikai11a.pdf
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