2016年2月22日月曜日

ヴァージニア・ヘンダーソンについて

ヴァージニア・ヘンダーソンのBasic Principles of Nursing Care1960『看護の基本となるもの』日本でも1961年に邦訳されて以降永く読み継がれてきているただ本書の通説的解釈と実際に読んだ時の印象との間にかなりの乖離があることは確認しておく必要があるだろう
ヘンダーソンは、少なくとも本書を読む限り、通説のように人間の基本的ニードが14段階に分かれるとは言っていない。第2章「人間の基本的欲求およびそれらと基本的看護との関係」の中で、人間の基本的欲求(fundamental human needs)と基本的看護との間に重要なズレがあると言っているのである。
ヘンダーソンによれば、看護が人間の基本的欲求に根ざしていることは一般に認めらるが、その「要素となる欲求は、社会学者や哲学者によって分類され是認されているが明らかに単純化されすぎており、繰り返しくつがえされてきた。文化が異なれば人間の欲求も異なった形で現れ、また各人はそれぞれなりに欲求を表現する。」「人間には共通の欲求があると知ることは重要であるが、それらの欲求がふたつとして同じもののない無限に多様の生活様式によって満たされているということも知らねばならない。このことは、看護師がいかに賢明でも、またいかに一生懸命努めようとも、1人ひとりが求めることすべてを完全には理解できないし、その人の充足感に合致するように要求を満たすこともできない、ということを意味している。看護師にできるのはただ、看護師自身が可が得ている意味ではなく、看護を受けるその人にとっての意味における健康、その人にとっての意味における病気からの回復、その人にとっての意味におけるよき死、に資するようにその人が行動するのを助けることである。」邦訳pp. 17-18
ここには、ヘンダーソンのケアについての深い洞察、看護の限界についての謙虚な認識が示されている。彼女のいう基本的看護とはその限界を前提として提示されたポジティブリストであると理解すべきだろう。私の理解する限り、彼女の基本的ケア観は生活モデル的である。





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