一橋大学がPR用に作成した『一橋大学案内2011』の見本が教員に配布されました。
『一橋大学案内2011』製作の過程で、学部ゼミ紹介部分で私が担当した部分(p.25)がありますので転載します。
今から振り返ってみれば、大学やゼミについての一般的な性格付けをしているところについて、「私は~~思う」と謙虚な立場で書いておけばよかったと反省しています。
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社会学部 猪飼ゼミ
大学とは何でしょうか。皆さんだけでなく大学生の間でも一般的な理解は、第1に有利な就職を実現するための梯子のようなもの、第2により専門的な知識を学ぶところ、第3に資格を取るところ、といったところでしょう。大学にそのような役割があることはたしかですが、実は、大学の最も重要な意味は、知識を生産するところであるということです。実際、大学の独自性は、自ら知識を生産している人びとが学生を教えているという点にあるのです。
本学を含め多くの大学においてゼミナールの制度があるのは、知識を生み出すということがいかなることであるかを学ぶためなのです。知識を生産する現場の思考や生産の過程は、できあがった講義内容にできるようなものではありません。そこで、少人数の学生と教員との間の対話を通じて、それを学んでゆく必要があります。これがゼミナールです。えっ?勉強することと知識を生み出すこととの間にそんなに違いがあるのかですって?それを理解するには、大学のゼミナールを経験してもらうのが一番ですが、前触れ的に言っておけば、両者の間には、音楽を聴くことと作曲することくらいの違いがあるのです。
猪飼ゼミは、社会政策のゼミです。社会政策というのは、人びとの生活を支援する政策体系のことで、従来、雇用・医療・年金・介護・生活保護などの制度整備を軸に、主に戦後大きく発達してきました。「社会保障」とか「福祉国家」といった言葉は皆さんも聞いたことがあると思いますが、これらはいずれも社会政策の展開のなかで発達をみた生活支援のあり方を指しています。
では、社会政策において知識を生み出すということはどういうことでしょうか。1つのやり方は、現実の生活を深く理解することです。人びとは他人に言われなくとも一生懸命自分の生活を成り立たせようと努力しています。それが個人的にあるいは集合的にどのような結果を生んでいるのか、これを突き詰めてゆくと従来誰も知らない知識に到達する可能性があります。もう1つのやり方は、現実の深い理解を前提として、人びとが生活上抱える問題を解決する方法を考えることです。これも突き詰めてゆくと、真に新しい問題解決の方法に到達する可能性があります。
猪飼ゼミでは、生活やその支援についてとことん考え、知識を生み出してみたいと思う皆さんを歓迎します。
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『一橋大学案内2011』
http://www.hit-u.ac.jp/admission/digital_p/pamphlet.html
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