2010年7月15日木曜日

日本ヘルスサポート学会について

7月2日に慶應大学で日本ヘルスサポート学会が開催され、シンポジウム「エビデンスに基づく肥満対策」に1聴衆として参加してきました。

よく理解できたことは肥満対策の構図が以下のようになっているということです。
1)肥満の方がまずすべきことは明確で、摂取エネルギーを消費エネルギーが上回ればよい。
2)だが、そのようなダイエット(食事と運動の変更)に参加させることは容易ではない。
3)そして、ダイエットによって達した適切な体重を維持することはもっと容易ではない。

司会をされた松田晋哉氏も、このような対策は医学だけではなく、より学際的なアプローチが必要であると述べておられました。

登壇された3人の演者は、いずれも特定健診・特定保健指導に関わる医師・管理栄養士でだったのですが、内容としては、事業所の従業員に体重や運動の記録をつけさせてそれにアドバイスをするプロセスをメールで行うシステムの紹介、ゲーム的要素を入れたり、複数人でチームを作らせてダイエットを競わせる試みなどの紹介などでした。

肥満対策が生活習慣病の予防を主要な目標としていることを考慮すると、これらの「対策」がどのような効果と限界をもつかがよく分かります。すなわち、生活習慣病の予防は、生活の習慣を改善することが必要ですが、それはダイエットや運動を動機づけることとは違います。気がついたらそのようにしていた、というオートマティズムのレベルで適切な食事と運動が習慣化されなければ、生活習慣の改善にはなりません。その点からいえば、シンポジウムで提示された肥満対策は、上記の2)の解決に資する一方で、3)には無力であるということになります。

この機能の限定性は、特定健診・特定保健指導が果たしうる肥満対策への貢献の限界を示していると言えるかもしれません。

3)については、個人の食習慣・運動習慣が、いかにしてその人の生活環境の中に埋め込まれているかを理解しなければなりません。これを解明する上で、従来の医学や保健学的アプローチに限界があることはたしかで、そこには社会科学の果たすべき重要な役割があると思います。

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