2010年8月14日土曜日

鈴木晃仁さんによる書評

週刊読書人2010年8月13日号に拙著『病院の世紀の理論』の書評が出ました。

評者は、慶應大学の鈴木晃仁さんで、イギリス医療史を専門とする方です。書評は見かけ以上に大変な作業で、書評の労を執って下さった鈴木さんには深く感謝申し上げます。

優れた書評は、評者の知見を対象となる書籍を結びつけることで、著者が言及していない深い論点を提示します。鈴木さんの書評で特にこの特徴が現れたのは以下の箇所ではないかと思います。

「日本の医師たちが建てた「病院」は、西洋の(そして日本の)壮麗な公的な病院とは違い、その多くが木造二階建てで自宅に病室が併設された安上がりで小規模なものであった。猪飼の著作が示唆しているのは、このような建物でも「病院である」と感じさせることができるような方向に、日本が吸収しようとした西洋の医学と病院が進んでいたということである。」(4面)

これは、日本の20世紀の特に前半を通じてみられたある種のみすぼらしさにもかかわらず、それがなぜ「病院たりうる」といえるのか、という私が直接言及しなかった重大な論点についての言及です。そして、日本の「病院」が病院であるとすれば、それを可能とする医学・医療技術の体系とは何かが問われるべきであり、1つの答えの可能性として、20世紀の病院が「病院が内部に備えている機械や技術が注目されてゆく」という普遍的な方向性を有していたのではないかという見解を示しておられます。

鈴木さんのこの指摘は、日本の近代医療史のみならず、20世紀の医学・医療技術の普遍的性格を、日本を補助線として理解することができる可能性を示唆しており、私自身大いに学ばせていただきました。

ご関心のある方は是非読んで頂きたいと思います。また合わせてブログでも短評をつけて頂いているので、そちらもリンクしておきます。

週刊読書人2010年8月13日号
http://www.dokushojin.co.jp/backnumber/backnumber-new.html

鈴木晃仁ブログ
身体・病気・医療の社会史の研究者による研究日誌
http://blogs.yahoo.co.jp/akihito_suzuki2000/60142766.html

1 件のコメント:

  1. 猪飼さん、鈴木です。 拙い書評からいい点を見事に引き出してくださり、本当にありがとうございます。 書評の書評、というやつですね(笑) このたびは、立派な本を書かれておめでとうございます。 また、お会いできるのを楽しみにしています。 

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