2011年4月27日水曜日

南三陸町の子どもに絵本を届けるプロジェクト報告(2)保育実践報告

以下は、今回の南三陸町での活動に参加した保育士の1人が、保育実践報告として書いたものです。避難所に暮らす母子の苦しい現況が分かるとともに、保育士ならではのケアの可能性を感じて頂けるのではないかと思います。保育士の中には本当のプロフェッショナルとしての仕事ができる人がおられます。これらの方々の力は震災時においても、十分に活用すべきものではないかと思います。

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≪ほっぺとほっぺがくっついた≫
私は、避難地にいき絵本を読んだり一緒に遊んだりと沢山の子ども達と関わってきました。その中で1つエピソードを紹介します。

ある避難所の子どもに絵本を届けに行きました。その避難所はどこか空気が重く、みんな疲れきっているようにも見えました。そこにいた保育士のお母さんと子ども(だいちゃん)はとても強いストレスを感じているようで、とにかく落ち着かない様子でお母さんに抱っこを求めたりあめをほしがったりを繰り返し訴えていました。少しでも自分の要求が通らないと大きな声で泣き叫ぶので、しょうがなくあめをわたしとその繰り返しで、子どもに振り回されている状況のお母さんでした。被害を受け、子どもの精神状態に戸惑い疲れきっていました。だいちゃんに声をかけるがとても冷たい目をしていて、一切私と関わろうとしませんでした。しかし、車の絵本が好きということで、母と一緒に選びにきました。

≪ほっぺとほっぺがくっついた≫
私:「車すきなの~。さがしてみるね~」(少し距離が近づいた気がした)
1冊あり、もう1冊ほしそうにしていた。
私:「今度はどこにあるかなって一緒にさがしてみよ~」(少しずつ心を開いてくれてるぞ)
子:(一緒にさがそうとする)
母:「もう1冊もらったでしょ。」
子:「(怒る)ママだっこ~!!!あめ~!!!」
母:「今お話してるからまっててね。」
父が抱っこし、だいちゃんをダンボールで仕切られた寝る場所につれていく。
私はどうにかだいちゃんの心を和らげたいとおもい、後を追った。
だいちゃんはお父さんの隣で絵本を見ていた。
私:「絵本おもしろい~?一緒に見たいなぁ~」(つぶやくように言ってみた)
子:(ちらっとこちらを見て)「きて~。」
私:「やった~!一緒にみよ~」(えっ!!いいの?・・・とても嬉しかった)
しばらく絵本をみて、もっと違う絵本を持ってきてと言われたので、一緒に行こうと誘い、抱っことおんぶどっちがいい?と聞くと、「抱っこ!」と答えてくれた。初め会った時は、私に抱っこされるなんて絶対にイヤ~というかんじだったので心が通じたきがした。
しかしお母さんを見た瞬間、またいつものように「ママ~抱っこ~」とぐずりだした。やはり今まで蓄積されたストレスは大きいものだなと感じた。母はもうどうしたらいいのか分からない状況でだいちゃんも辛そうだったので、だいちゃんを外に連れて行ってもいいか母に聞き、私が関わることにした。抱っこして外に連れていくと、
子:「ママのとこいく~あっち~ママ~」(泣きながらあばれだす)
私:「ママがいいよね~。ママのとこいくね~。あっちいこうね~」
(校庭をぐるっとまわり、ママの所に向かいながら、時間かせぎ・・でも無理はしたくないし、あんまり泣くようだったらママのところに連れて行こうと思っていた。でも少しずつおちついてきて、私のいっている事を聞こうとする姿があった)
私:「あっちいく?」
子:「うん」
だいちゃんのおばさんが私に迷惑をかけると思ったようで、だいちゃんを引き取りにきた。でももう少し関わってみたいと思った私は、「もう少し関わらせてもらっていいですか?」と聞くと、「お願いします」と答えてくれた。
私:「そ~だ~。おにいちゃんいいものもってるんだって~」「みてみて~」
(ギターのひける保育士さんに助けを求めた)
子:(少し興味を持ったようで泣きやむ)
(ゆめわかばをひいてもらった)
だいちゃんを抱っこしながら、私も一緒にうたをうたった。だいちゃんの身体の力が抜けてくるのを感じた。眠かったのか私にもたれかかるように・・・、
“ほっぺとほっぺがくっついた”
おばさんは、だいちゃんが落ち着いていく様子とゆめわかばの歌に涙を流していた。
ゆめわかばが終わると、「寝るかな~遊ぶかな~」と声をかける。自分から靴をはきに行き自分から私たちと関わろうとしてきた。その後は広い校庭で思いっきり遊んだのだ。

たった1時間くらいのやりとりだったが、だいちゃんの心の変化に嬉しく思ったと共に、避難所で子育てをする大変さを感じました。今回の親子のように、被災し子育てに苦しんでいる親子はとても多いのではないかと感じ、私たちのような第三者の保育者の役割の必要性を強く感じました。

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南三陸町の子どもに絵本を届けるプロジェクト報告(1)はこちら

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